コラム 第9回 「フルオーダー」

ウナボルサのスタッフによる、「革とのつき合い方」コラム全10回が新聞に掲載されたのでご紹介します。静岡新聞のほか、地方新聞(京都ほか10紙)にも掲載されました。

お客さまの感性から学ぶ。フルオーダー

前にオーダーメイドについて書きましたが、もう少し詳しくお話したいと思います。

オーダーメイドには、フルオーダーとセミオーダーがあります。思い通りのかばんを作るフルオーダーに比べて、定番商品をベースに少しだけ仕様を変更して作るセミオーダーは、それほど価格は高くありません。それぞれに良さがありますが、定番商品を少し変えて気軽に自分好みに近づけられるセミオーダーは人気のようです。

私たちのお店でも受注の大半がセミオーダーです。一番多いのは、色の変更。同じ商品でも色によって雰囲気が変わります。お客さまと一緒に色を決めていく過程は、とても楽しいです。色のほかに多いのは、サイズの変更。「デザインは気に入っているんだけど、ちょうどいい大きさがない」という人が結構いるのです。

フルオーダーは製作に時間も手間もかか出合うりますが、職人にとってやりがいのある仕事です。一番の理由は、お客さまの感性から勉強させてもらえるからです。お客さまは自分にとって心地よい物が欲しい。作り手の側は、その思いに応えるために最大限の知恵を絞る。すると、お客さまのご希望を聞く過程で以前には考えたこともなかった新しい発想に出合うことがあります。つまり、フルオーダーはお客さまと二人三脚で一つの商品を作り上げるようなもの。職人の夫はいつもこう言います。「フルオーダーを通じて、技術の幅が広がり成長に繋がっている」と。

理想が形になるワクワク感と、オーダーしてから完成するまでのドキドキ感。その気持ちは、お客さまも職人も同じなのです。

静岡新聞・夕刊 2017年3月3日掲載